2009年02月25日

妙心寺展の見つけもの

妙心寺展は如拙の瓢鯰図や、メトロポリタンから里帰りした狩野山雪の老梅図などが売り物だが、あまり感動を与えない。
白隠の書や達磨像もあるが、これも既視感に囚われる。

老梅図.jpg


山雪の息子の海北友雪の雲龍図襖が、やや琴線に触れる。

しかしどの展覧会にも、予想もしない驚くような作品がある。

昭和天皇宸翰の「無相」号が第一室にさりげなく展示されている。
妙法寺を開山した関山慧玄の「無相国師」の号を600年遠諱の際に昭和天皇が揮毫されたものだ。
晩年の昭和天皇の静かなイメージとかなり異なり、力強く且つ清明で気力の充実が迸る。
天皇の58歳の時の書だが、若い時に背負った時代の重さに対峙してきた精神力を想像する。

春日局消息も中々のもの。
大奥で権勢をふるった女性の書は、力強い連綿で禅僧ばかりの墨蹟の中で一際異彩を放っていた。

春日局消息.jpg


国宝の妙心寺の梵鐘は場違いな雰囲気だが、記年銘があるものの中では日本最古で698年。
銘糟屋評造舂米連広国も、調べ始めると深みに嵌りそうだ。
もう撞かれないそうだが、徒然草にも書かれている音を一度は聞いてみたかった。

oujiki.JPG


東博の平常展はいつも、思いがけない拾い物がある。
良寛の詩書屏風。ここだけは違う空気が流れる気配。

d803_2.jpg


特筆は「宝篋印陀羅尼経」。
平安時代の作で、今様などを書いた上に銀界線を引き金字で宝篋印陀羅尼経本文を重ね書きしている。
流麗な連綿に淡く重なる金の細楷は、平安は仮名と漢字の両方が絶頂に達した事を、余すことなく語り示し、その前に時間を忘れて立ち尽くすしかない。

s-IMG_0277.jpg
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2009年02月22日

中平卓馬の写真日和

何故か最近は写真家と遭遇する事が多い。

都内に出る時に、乗り合わせた電車の座席にどこかで見た風貌の人がいて、よく見ると御つきを連れた中平卓馬。

070422nakahira01.jpg  焚火.jpg

トレードマークの赤いキャップに、細身のジーンズ。撫でるようなしぐさで片時も離さないカメラは、トレードマークのストラップを付けたキャノンF1。
御つきがキャノンのG10を持っていたのも御愛嬌だ。

早い春の、うららの写真日和、何処へ気ままなスナップを撮りに行くのか。

中平卓馬の作品は、2003年の「原点復帰-横浜」以来見た事がないが、ますます元気な森山大道や東松照明の活動に比べて気に懸かっていた。

記憶を失ってから復帰したカラーの横浜の写真は、河原での焚火の作品の印象が鮮明だが、主張することを止めて浮遊している映像は人に語る意思を持っていない。
もはや神話を誰も求めないので、作品はどうでもよく、シャッターを押す行為にだけ意味のある、気持ちの良いスナップを撮ってもらいたいと思ったものだ。
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