案内に従って裏手に回るが、極普通の家があるだけで美術館の所在がわからずに立ち去ろうとすると、玄関が開いて、ご夫人に招き入れられた。
このささやかな私設の美術館は、2006年に彼女の作品を展示するために、息女の鈴木さんがご自宅を改修して作られおり、一階と二階に数十枚の作品が展示されている。


杉本そよさんは若い頃に絵を志し、一時中断し多分50歳近くになって創作を再開し作画を続けながら91歳までご存命だった。
20歳そこそこの若描きの作品は、純和風で伝統的な描き方だが、その後日本画の作風は変転し、静物、植物、建物、風景と気持ちの赴くままに描かれているようだった。


展示室は肉親の作品を公開して、人に知ってもらいたいという気持ちが浸透るように感じられ、生きていた営みを作品を通じて伝えようとしている家族の愛情が漂っていた。



残念ながら、何の宣伝もしていないので、訪れる人はあまりいないということだったが、作品とともに、記憶の伝え方とそれを守っていく人の志、それらが紡ぎ出す静かな物語を垣間見て、深く考えさせられた。