上野の都美館と西洋美術館はフェルメール目当てで、暑さにもかかわらず長蛇の列だが東博はひっそりとしている。
青山杉雨の事は殆ど知らなかったが、東博で個人の書を特別展で扱うのは西川寧以来二人目と言う事だ。
編年体のように展示されている作品は、一作一面貌と言われる次々変貌する作風をよく表しているが、70歳を過ぎてからの作品が素晴らしい。
とりわけ印象に残ったのが「書鬼」と言う作品だ。
この作品は最晩年の最後の大作で、81歳の死の前年に子息に身体を支えて貰って書いたものとされるが、死の床での裂帛の気配が書の周りに漂っている。

一つの書だけでも、その人の生き様を語りつくす事が出来るということだ。
常設展には、時々思いもかけぬ書の作品が展示される。
良寛の枯れかじけた自画賛「貴賎老少唯自知」、画は髑髏。

良寛の最後は 貞心尼との相聞で知られるが、髑髏の画は何時のものだろうか。
青山杉雨の最後と良寛の最後は書において対比的だが、何れもきりきりと人の心を騒がせる。
うらを見せ おもてを見せて 散るもみぢ