2013年01月11日

川俣正展「Expand BankART」

今年の初参観で、会期末の川俣正展「Expand BankART」 へ。

開催期間中に作り続けられ、未完の姿が完成形と言う崩壊感覚溢れる彼の作品は、国内では披瀝できる場が殆ど無く、これだけ大規模なものを見れることは珍しい。
11月上旬から製作が始められ、川俣は製作完了を待つことなく12月8日にパリに戻っている。正にワークインプログレス。

BankARTの外部に設営された、パレットによる同形のものを少しずつずらしながら配置するインスタレーションは癌細胞が増殖するような不気味さだが、人工物のため意外と整然としており、柴田敏雄が写し出すグロテスクさとよく似ている。

20130110川俣正展2s-.jpg  201301010川俣正展4s-.jpg  20130110川俣正展3s-.jpg


会場内部は1Fは木製パレットによるkawamataホール、2Fは木製サッシによる天井、3Fは藤森照信の高過庵を思わせるような柱に取り付いた小屋、とそれぞれの出し物があるが、ホール以外は力が抜けている。
多分現地で企画構成し、ワークインプログレスと言えども企画が密度の濃さまで至らなかったのだろう。

20120110川俣正展1s-.jpg  


幾つかの映像作品もあり、パリのサン・ルイ教会の「椅子の回廊」などはかなり刺激的で、これが本来の川俣かなとも思える。

川俣は木製の材料でインスタレーションを行う事が多く、その理由として加工と入手の容易さをあげているが、あまりにも判りやすいその説明は目眩ましに思える。
生まれた北海道の三笠市の風土と関係がありそうにも思えるが、固執する原体験があるに違いない。

豊洲ドームも、今回の作品群も廃材が利用されている。
豊洲ドームの折は、豊洲の埋立地が関東大震災の瓦礫であることを知り、廃材を使う事を思いついたと。
パリには被災地の廃材によって、木造10メートルの構築物をつくり上げていく計画も進んでいるという。
真新しい材料でなく、廃材を使うのは崩壊感覚に拍車をかける。当然Expand BankARTで東日本大震災の廃材を使う構想もあったのではないか。
それが実現すれば、インスタレーションは現実と虚構の二重の崩壊性を獲得し、重層的な意味を持ちえただろう。
川俣は、岩手プロジェクトで被災地支援も行っているが、Expand BankARTでは、しかし今回は東日本大震災へのメッセージ性は希薄だ。
進行形の重く突き刺さる現実を、虚構がどのようにしても超えられないとの諦観だろうか。

展示の素材として大量に使われている木製サッシは、解体中の近くの海岸通団地から持ち込まれた。
解体現場に立ち寄ると、粉々に砕かれて瓦礫となったものたちは、東日本大震災の無惨な光景と重なり合いどこか涙を流しているようだったが、数本の樹木はかろうじて伐採を免れて残存していた。
木製のサッシは会期末にその寿命を終えるが、樹はきっと軽やかに人々の記憶を留めて生き続ける。

東日本大震災から1年10ヶ月が経った。

20130110海岸通り団地1s-.jpg  20130110海岸通り団地2s-.jpg
posted by 遊戯人 at 21:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 観る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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